果たして「松坂世代」の復活はなるか トミー・ジョン手術からの再起を目指す男たち

「松坂世代」の優秀さを表す要素

 では、肘が壊れる理由は何なのか。例えば松坂は、精密検査を受けた結果として靱帯が「損傷」ではなく「断裂」であることが判明し、医師から「手術しなければ復帰できない」と告げられているが、藤川は勤続疲労が原因の1つだと分析する。

「要素があるのかもしれないですよね。アメリカでもトミー・ジョンをしている世代は、そこそこのボールを投げるピッチャーしかならない。僕たちの世代は使い古したという感じになる」

 日本の野球界を席巻した「松坂世代」は、プロ入り後もチームの主力として活躍してきた選手ばかりだ。和田はソフトバンクのエースとして、藤川は阪神の絶対的な守護神として君臨していた。松坂を含め、誰もが責任を持ってマウンドを守り続けてきた。その負担が肘にかかり、たまり続けたものが一気に出てしまったとしても不思議ではない。

 米国では、スティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)、マット・ハービー(メッツ)といった25歳以下の若い選手もトミー・ジョン手術を経験している。この2人はいずれも速球派として知られており、投球フォームに靱帯が耐えられなかったとも考えられる。つまり、靱帯を傷つける原因は決して“投球過多”だけではないわけだが、「松坂世代」が30歳を過ぎて次々と肘を壊していることについては、やはり共通の原因があるように思える。藤川は、むしろ肘の故障で片付いていることは「松坂世代」の優秀さを表す1つの要素だとすら考えている。

「その手術で済むというのは、フォームがいいんじゃないですか。復帰確率の高い故障で、例えば肩とかヘルニアとか、そういうのではなくて、トミー・ジョン手術だということは幸運なのか、もしくは、自分たちのフォームがそれなりに自然な形で、無理のないフォームなのかもしれない」

 藤川からすれば、それは「松坂世代」の誇りと言えるのかもしれない。

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