日本時間12日未明のヤンキース入団会見 田中将大が紡ぎ出す言葉とは
田中が紡ぎ出す言葉は大きな期待と責任を伴う
アメリカでは、どれだけ田中将大という投手の実像を知っている人がいるだろう。ニューヨークの新聞には(フリーペーパーではあるが)、田中将大と澤村拓一を間違えて掲載するミスをおかしたところもあった。投手像をおおよそしか把握していない記者が、想像を交えて描き、報じているケースもあるに違いない。だが、田中は自分が直接、見ていない、あるいは、感じていないものについて語ることはできなかった。実像のないものを語っても仕方がない。それが田中の本音なのだ。
開幕から24連勝し、黒星がつかないままシーズンを終えた田中のピッチング。ライバルたちが口を揃えたのは、「得点圏に走者を出したときの馬力、ギアの違いを感じた」ということ。つまり、1点も相手にやりたくないと思ったときは、その場の空気感、流れを感じ取り、一段、ギアを上げる。スピード、キレ、コントロール……。あらゆる面でレベルが上がり、打者をねじ伏せて、点をやらないのだ。
そんなピッチングと同じように、その瞬間、瞬間に感じたことを大事にしていきたいというのが田中の考えだった。
成田空港での出発時、入団会見でどんな言葉を話そうと思っているかを問われると「まだ考えていない」と答えた。「そのときに感じたことを言えばいいと思っています」。おそらく、これまでの日本人大リーガーのように英語のスピーチくらいは考えているだろう。ただ、ヤンキー・スタジアムの広い特別会見室に座り、アメリカのメディアの多さを見て、辛らつな質問をするニューヨークの記者の言葉を受けて、感じたことを口にすることを第一に考えている。
ヤンキースの入団会見は米国時間11日午後1時(日本時間12日午前3時)を予定している。渡米して、ボールよりも先に投じるメッセージは一体、どんなものなのか。田中は何を感じ、これまで「なかった」とあっさり否定しきた高揚感を、どのように表現するのか。その第一声から締めくくりまで、田中が紡ぎだす言葉は、大きな期待と責任を伴うに違いない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count