39歳でも衰えることのない驚異の向上心 黒田博樹が習得を目指す“新球種”
黒田に勇気を与える史上最高のクローザー
しかも、黒田にはカットボールと逆の変化をするシンカーという強烈な武器がある。左打者の内角のボールゾーンから急激に変化してストライクゾーンに入ってくる、いわゆる「フロントドア」は、相手打者を苦しめてきた。カットボールが使えるようになれば、このボールもさらに生きる。
カットボールの精度は、ブルペンでは確実に上がってきている。ただ、打者を相手にしたオープン戦では制球に苦しむことが多く、本人は「まだまだここ一番で使えるボールではないと思いますね」と話す。それでも、前向きな取り組みをやめることはない。
世界一のカットボールの使い手だったある人物の例も、黒田に勇気を与えている。昨季限りでヤンキースのユニホームを脱いだ史上最高のクローザー、マリアノ・リベラだ。
リベラには、キャッチボール中に遊びで握りを試していたら、突然、強烈なカットボールが投げられるようになったという逸話がある。その「宝刀」と直球の2球種だけで、メジャー史上最高の652セーブを記録した。
黒田は昨年、リベラからボールの握り方についてアドバイスをもらっていたという。「リベラ型カッターか?」と聞かれると「いやいや、ダメでしょ(笑)。そりゃ失礼でしょ(笑)」と冗談交じりに話してから、こう続けた。
「彼も急に遊びで投げていたのが投げられるようになったというくらい。どこに潜在能力があるか分からないので、トライするべきだと思います。何かが彼に降りてきたような感じなので、僕もいつかそういう機会があればいいかなと思っていますけど」
もちろん、そんな簡単ではないことは分かっている。「降りてきそうか?」という問いには「ないでしょう。そんな簡単に降りてきたら、リベラが怒るでしょ」と再び笑った。