延長15回に及ぶ熱戦の裏側 明徳義塾・馬淵史郎監督が「勝てる」と思った瞬間とは
「後攻めは絶対に有利なんや」
「あの時、お互いに左投手に弱いですよねって話をしたし、うちの(エース)岸の調子がいいということを話した記憶があったんだ」
それが、まさか1回戦から当たるとは……。
そうなると、当然、高嶋監督は明徳義塾が先発投手を岸で行くことは分かっている。逆に、馬淵監督も相手が明徳打線に左投手をぶつけてくることは分かっていた。そのため、明徳義塾は速球派右腕の東妻対策ではなく、左の斎藤対策をして、試合まで調整をしていたのだった。
結果、岸、斎藤両投手ともピンチは招くも、9回まで1点に抑える好投。名将の読み合い、探り合いは延長戦に突入した。2人は試合中、意図的に目を合わせないようにしていたという。ジッとグラウンドと選手だけを見ていた。ただ勝つことだけを信じて。
その裏で、馬淵監督は試合が終盤になるに連れて、勝つ確率が上がっていく感触をつかんでいた。試合前の先攻、後攻のジャンケンに勝ったら、必ず「後攻」を取れと命じていたのである。
「後攻めは絶対有利なんや。ジャンケンに勝ったら後攻を取れと言っていた。もし、勝ち目がないと思ったり、7対3の割合で負けると思ったら先攻を取る。投手の不安定な立ち上がりを攻めて、そのまま逃げ切る作戦です。でも、今回は僅かな点差の試合になる。だから後攻めを取らせた」
これが最後の最後、延長15回に響くことになる。