FA市場に残された“最後の大物”が6月に入ってツインズと契約 契約成立の足かせとなったクオリファイング・オファー制度とは

チームが手放したくない“ドラフト1巡目指名権”

 前述のモラレスも、昨季所属したマリナーズから受けたQOを拒否していた。だが、拒否するだけで、これほど長い“浪人生活”を送らなければならないのだろうか? 各チームがモラレスとの契約に二の足を踏んでいた理由は、複数年契約を結びたくなかったから、というわけではなく、ドラフト1巡目指名権を手放したくなかったからだ。そこには、ドラフト指名選手との契約に関わる問題も付随してくる。

 最近のトレンドとして、大半の球団が生え抜き選手を数多く育てる自給自足スタイルを取るようになっている。数年前まで、ドラフト上位指名の多かったレイズやパイレーツ、ナショナルズといったチームが得意としていた形態だが、最近はヤンキースやレッドソックス、ドジャース、レンジャーズなど、資金力があると言われるチームも若手育成に重点を置くようになった。

 それというのも、ドラフトで上位指名を繰り返した球団が、生え抜きの若手を中心に堅実なチームを作り上げ、資金力に物を言わせて即戦力を集めるチームの存在を脅かし始めたからだ。加えて、選手の年俸が高騰。選手を買いあさるにも限りがある。ドラフト上位指名で有望株を手に入れておけば、トレード要員として使える可能性も高い。そんな意味でも、ドラフト1巡目指名権はできる限り手放したくないものとなった。

 さらに、現在の労使協定により、ドラフト指名された選手に支払われる契約金に、厳しい上限が設けられるようになった。指名順によって契約金の上限が決まっていて、下位になるほど金額は下がる。上限を超えた契約金を支払う場合、球団はMLBに対して罰金を支払わなければならない。

 これまで、上位指名権を失ったチームは、狙っていた選手(主に高校生)を下位で指名しながら順位相当以上の契約金を支払うことで折り合いをつけていたが、現行制度では難しい。上位指名権を失うことは、支払える契約金の上限を引き下げ、ドラフトでの自由度を減らしてしまう。

 そんな背景もあり、QOを却下したFA選手と契約する場合には、選手の実力に見合った契約年数と金額を用意できるか、さらにはドラフト指名権を失うだけの価値があるのか、いろいろなものを天秤に掛けなくてはならない。

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