メジャーリーガーたちものめり込むサッカーワールドカップ クラブハウス内に響き渡る「WOOF(ウーフッ)!」の声
韓国のドローに「ノー!」と絶叫した秋信守
だが、後半23分に韓国が先制するとガッツポーズを残して、打撃ケージでの練習に向かった。練習から戻ってきたのは、試合終了のホイッスルと同じタイミング。それまで歓声を上げていた面々が姿を消しているのを確認すると、テレビの前に直行し、スコアをチェック。1-1の引き分けに終わったことを知るなり、「ノー!」と大声を上げてうなだれた。
さらに一言。「大体いつも同じ、先制するけど追いつかれるっていうパターンなんだ」。関心ないと強がってみたものの、やっぱり気にはなるようだ。
サッカー好きの選手たちは、試合観戦中、シュートがゴールを外れる場面で、なぜか必ず低い声で「WOOF(ウーフッ)!」とうなる。本来は犬の鳴き声を示す言葉だが、日本語に直すと「オーッ!」「ウーッ!」「ウワッ!」といった言葉にならない声に近い。
その様子を楽しんでいるのが、先発左腕のソーンダースだ。誰よりも大きく「ウーフッ!」とうなるソーンダースは、「別にサッカーが好きってわけじゃないんだ。それよりも、わざと大きな声で“ウーフッ!”って言いながら、夢中で見てる人をからかう状況が面白いんだ」といたずらっ子のような笑みを浮かべる。
だが、同じ行動を1週間も続ければ、どんなことでも体に染みつく。最近では、サッカー好きな選手ですら、ほとんど見ないような試合を見ながら、1人で「ウーフッ!」とうなり声を上げることもしばしばだ。
W杯はまだまだ始まったばかり。1次リーグの後には決勝トーナメントも残っている。決勝が開催される7月13日までに、メジャーリーガーたちがどこまでサッカーに関心を持ち、知識を増やしているのか、楽しみだ。
【了】
佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。