愛されたスーパーサブ 元巨人・古城茂幸氏の功績

人望が厚く、大切な存在だった古城茂幸

 久しぶりの光景が目に飛び込んできた。ユニホームを脱いで半年。古城茂幸氏は今月21日、交流戦の巨人-ソフトバンク戦のテレビ中継の解説のため、以前、自身が本拠地として戦った東京ドームを訪れていた。かつての仲間との再会。巨人ファンの中には古城氏が来ていることを知り、場内を探す者もいた。

 昨年の10月3日に引退セレモニーを行って以来の東京ドームだった。「泣かないと決めていたのにね。僕に涙なんて似合わないですから。でも、無理だった。こんな僕にここまでしてくれるなんて信じられない気持ちです」。

 1998年に国士舘大学からドラフト5位で日本ハムに入団。06年にトレードで巨人に移籍。控えに回ることが多く、主力選手と呼ばれるにはほど遠い存在だったが、球団は引退セレモニーを用意してくれた。ファンが古城コールの大合唱で別れを惜しんでくれたことは決して忘れられない。

 あの時、ライトスタンドに背を向け、ベンチに帰ろうとすると、同学年の高橋由伸外野手をはじめ、矢野謙次外野手、長野久義外野手、坂本勇人内野手らナインが総出で一塁側で拍手を送ってくれた。

 その瞬間、古城の目から熱いものがあふれ出した。そして、ペットボトルの水をサヨナラ勝利のヒーローのようにかけられ、涙と水で、もうびしょ濡れになった。チームはクライマックスシリーズ、日本シリーズを戦う直前の大事な時期だったが、古城だけのための時間を用意した。それだけ、人望が厚く、大切な存在だったことがわかる。

 プロ野球選手で引退セレモニーを行える選手はかなり少ない。その中で控え選手だった人はほとんどいないだろう。球団や首脳陣も古城の貢献度の高さを理解し、高く評価していたということだ。

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