愛されたスーパーサブ 元巨人・古城茂幸氏の功績
古城がチームから笑顔で送り出された理由
ある時、首脳陣は古城の万能ぶりを頼りに、1軍に昇格をさせた。古城にはもちろん迷いはない。遠征地での試合だったため、荷物をまとめ、駅に向かった。しかし、新幹線に乗る前に、ここで行っても戦力になれないと思えるほどの痛みを発症し、自宅へ引き返し、別の選手が昇格するということがあった。
痛みに強かったはずの自分が、痛みに負けた。
この衝撃は古城の中で大きかった。手術を受ければ、治るかもしれない。だが古城のモットーは求められた時にプレーできなければ自分ではない、ということ。手術をしてしまえば、声もかからなくなる。治療と練習を続けることにした。状態は上がることはなかった。それでも、自分のポリシーのもと、バットスイング、打撃練習を再開した。痛みをこらえながらスイングしていた。
そして、引退を決めた。会見では「もう体が動かなくなってしまった」と理由を説明した。
最後まで体を張って、1軍に呼ばれる時のために準備を進めていた古城氏。その姿を、チームメートも知っている。苦しみを見せず、明るい性格で、常に笑顔で振る舞った。だからこそ、チームメートも最高の笑顔で送り出し、チームはその功績をセレモニーという形で称えたのだった。
古城氏は現在、ジャイアンツアカデミーという少年野球チームのコーチを務め、野球振興に取り組んでいる。好投手、強打者、ユーティリティープレーヤーを育成している。また、副音声とはいえ初めてのテレビ解説を務めた。元選手とあり、面白いと評判も良かった。プロで培った経験を糧に第二の人生を歩んでいく古城氏は、今後も応援したいと思わせる野球人である。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count