なぜプロ注目の選手たちは今夏の甲子園に届かなかったのか
個人の能力だけで勝ち抜けるほど甘くない
「群馬や愛媛の選手たちは『この選手を倒さないと俺たちは甲子園にはいけないんだ』と思い、立ち向かっていた。だから、その(大物)選手への対策をチームで束になってやってきたのが、よくわかった」
つまり、ピッチャー1人に対して、打者9人、ベンチ、監督が一枚岩になり対策を講じ、相手を攻略するという構図になっている。プロ注目の選手といえども、個人の高い能力だけで勝ち抜けるほど、甲子園は甘くないということだ。
一昨年も振り返ってほしい。2年生の夏に切れのあるスライダーを武器に甲子園で22奪三振の記録を作った神奈川・桐光学園の松井裕樹(楽天)も3年夏には甲子園に出場できなかった。
準々決勝で桐光学園を破った横浜高は打撃練習で松井のスライダーを打つため、打撃マシーンをマウンドより前に置き、スライダーを投げるように設定。低めを見逃す練習など、球を見極める特訓をしていたことも選手たちは明かしていた。全員で松井を倒しにいった結果だった。
逆に今回、春夏連続出場する沖縄尚学や青森の八戸学院光星、京都・龍谷大平安、高知・明徳義塾、奈良・智弁学園などは相手の厳しいマークをはねのけて、一段と強くなって戻ってきたことになる。昨夏優勝の前橋育英を破り、群馬の頂点に立った健大高崎がどんなチーム力を見せるのか。センバツ準優勝の履正社を倒した大阪桐蔭、4強の豊川と佐野日大を倒した愛知の東邦と栃木の作新学院の飛躍も期待される。
開幕まであと1週間。プロ注目の選手だけでなく、チームの総合力に注目してみるのもこの夏を楽しむポイントと言えるかもしれない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count