春日部共栄が選抜優勝校・龍谷大平安を倒せたワケ
着実な成長を見せているエース金子
甲子園で組み合わせが決まった時、春日部共栄は選抜優勝校にびびってはいなかった。エースの金子大地は「龍谷大平安とやりたかったからうれしい」とまで言ったが、それは強がりではなかった。龍谷大平安の4投手のうち3人が左ピッチャー。これまで通りに練習をすれば、打ち勝てる自信があったのだ。
台風で大会の開幕がずれこんだが、その間もできるだけ左ピッチャーを打撃練習で立てて、バットを振り込んできた。メンバー外の左投手だけでなく、ベンチ入りメンバーの左投手にも投げてもらい、徹底して打ち込んできたのだった。
ある部員は「相手が平安だからといって、特別な対策をとったわけではないです。埼玉の小島や上條というピッチャーだって全国クラスの投手だと思っています。彼らを倒すように今までと同じ練習をしただけです」と言う。2番手投手の左腕・高橋奎二には抑えられてしまったが、普段通りの野球を貫けたからこそ、初回に5点を挙げることができた。
投げては夏に成長したエースの金子が1失点完投勝利。西武、横浜でプレーした元プロの左腕、土肥義弘氏が資格回復のOBとして練習を見に来て、投手陣の底上げを図ったことも勝利の一因と言えよう。
小島、上條、金子は「埼玉左腕3羽ガラス」と呼ばれるほど、代表的なレフティーだった。金子は土肥コーチの下、ピッチングに対する考え方が変わり、飛躍した。おかげで昨秋と今春の公式戦で敗れた他の2投手よりも長い夏を迎えることができた。
プレッシャーを感じていた王者が地に足がつく前に、本多利治監督の采配の下、間髪入れずに怒涛の攻撃を見せたこと。左腕投手対策が十分にできていたこと。春から夏にかけてエース金子が成長したこと。春日部共栄はそれらの要素が絡み合ったおかげで、開幕戦で金星を挙げることができた。
2回戦の相手は、初戦で21安打16得点と爆発した福井・敦賀気比。選抜覇者を破った春日部共栄が今夏をさらに盛り上げられるかに注目だ。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count