東海大四・西嶋の超スローカーブはなぜ効果があったのか 高校球界屈指の強力打線を封じられたワケ
推定50キロの遅球が生んだ効果とは
甲子園球場をどよめかせた東海大四(南北海道)の西嶋亮太の超スローカーブ。ふわっと投げて、高くあがるその球は推定50キロの遅球。このボールにはどんな効果があったのか。
相手は優勝候補でどんどん振ってくる強打者がそろう福岡の九州国際大付属。3番・古澤、4番・清水と高校球界屈指のバッターにヒットこそ打たれたが、9回を1点に抑え込むことができた。味方打線も一気にたたみかけ、3回に4点を取り、主導権を握った。
西嶋をリードした捕手の上野は西嶋のボールをこう説明する。
「あいつのカーブは2種類あります。スローカーブと超スローカーブです」
50キロの遅球である超スローカーブの方は「ストライクを取る必要がない球。相手にこういう球があるということをわからせればいい」と見せ球に使っているという。
確かにこのボールはコントロールがしにくい。打者の前にポトリと落ちて、ボール球になる。ただバッテリーの狙いはこれでよかった。身長168センチ、体重59キロと細身の西嶋が出せる直球のスピードは140キロ未満。だが、この超スローカーブの後の130キロ中盤のストレートに打者は完全に振り遅れた。ボールが速く見えるのだ。遅球は目の錯覚を生じさせる効果がある。
それだけではない。大脇英徳監督は「緩いボールと速いボール。横と奥行きを使って、うまくバッターを仕留めることができた」とバッテリーをほめた。「横」というのは内角、外角をしっかり投げ分けることで打者に狙い球を絞らせなかったことを指す。際どいコースをついて三振を奪った西嶋は、遅球の後のコントロールの良さが光った。
そして監督の言うもう一つの「奥行き」こそが、このスローカーブの最大の効果だった。
バッターは軸をしっかりと作ってスイングする。わかりやすくいうと、バッターは駒のように1本の軸を中心にしてスイングをするといい打球が飛ぶ。その軸が超スローカーブによって、崩された。