ワシントン監督の電撃辞任で広がる喪失感 レンジャーズが今こそ実践すべき指揮官の教え

ボガー・ベンチコーチの監督就任を予言していた指揮官

「ウォッシュ(ワシントン監督の愛称)にはプロとしての心得、内野手としての技術をイチからたたき込まれたんだ。何から何まで全部を教えてもらった。捕球に向かう時の足の出し方、グローブの出し方。ともすると、蔑ろにしがちなプレーの細部を決して甘く見てはいけない、体に染み込むまで何度も何度も練習すること。そして、正しく野球をプレーすることの大切さ。自分は結局ベンチプレーヤーで終わったけれど、それでも自分の仕事に誇りを持ってプレーし続けられたのはウォッシュのおかげだよ。ウォッシュの野球に対する愛情と情熱は、今も昔も全然変わっていない」

 昨季までベンチコーチを務めたジャッキー・ムーア氏が職を解かれた後、後任にボガー監督代行を推したのは、他でもないワシントン監督だった。「すごく頭のいい選手だったし、何事も一生懸命に取り組む努力家だった」と高く評価されるボガー監督代行は、マイナーで監督経験を積み、2008年にはレイズのジョー・マドン監督の下で「クオリティ・アシュアランス(品質保証)・コーチ」を務め、セイバーメトリクスを取り入れたデータ野球の訓練も積んだ。2009年からはレッドソックスで一塁コーチと三塁コーチ、ベンチコーチの職に就いている。

 確か前半戦終了間近の7月上旬だったと思う。全体練習中に打撃投手を務めていたボガー監督代行の姿を見ながら、ワシントン監督が突然こんなことを言った。

「自分はまだまだ監督を続けるつもりだが、1つ予言をしておくよ。いつの日か自分がレンジャーズを去る日が来たら、次の監督はボギー(ボガー監督代行の愛称)だ。ボギーは野球の人間くさい部分も持ち合わせながら、程よくデータ野球を織り交ぜることができる。監督の座を譲る気なんて更々ないが、アイツならいい監督になるよ」

 まさかの100敗ペースで進む今季の不振を悔やんでの引責辞任だという声もあるが、途中であきらめること、投げ出すことを、何よりも嫌うワシントン監督だ。責任を取るというのであれば、不本意なシーズンを最後まで選手たちと戦い続け、これまでと同様に最後まで矢面に立ってメディアやファンからの批判・不平の声を全身で受けて立っただろう。現場に選手やコーチ陣だけを置き去りにし、「引責」という形で責任逃れするような人物ではない。

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