夏の甲子園出場校が秋季大会で続々と敗れる波乱 新チームで勝つことの難しさ
波乱が見られる秋季大会
高校野球では各校とも夏が終わると新チームへと移行し、春のセンバツ甲子園を目指してスタートを切る。9月に入り、各都道府県のセンバツ出場の参考となる秋季大会が本格化してきているが、今年はすでにいくつかの波乱が起きている。
今夏、大会記録に並ぶ8点差からの逆転劇を演じた岐阜・大垣日大は1回戦で岐阜総合学園に0-2で敗れた。1年生右腕の藤嶋のいた愛知・東邦は2試合目の3回戦で誉高校に0-1。準優勝の三重は2回戦で甲子園出場経験のある海星に2-4で敗戦。山城を擁し、4季連続出場していた沖縄尚学は初戦となった15日の2回戦で宮古総実に4-6で敗れる波乱。名門校が続々と姿を消している。センバツ甲子園もほぼ絶望となった。
夏に2年生が多くレギュラーで戦っていたチームは新チームになってもスムーズに戦力の移行ができるが、3年生主体のチームであれば、全く違うチームになってしまう。大垣日大は甲子園での3年生レギュラーが9人中8人だった。東邦は7人、三重は9人全員で、決勝のみケガの内田に代わり、2年の山井が入っている。沖縄尚学も8人。夏の甲子園には出場していないが、すでに秋季大会で敗退した神奈川の名門・横浜も今夏の地区予選で9人が3年生だった。
つまり、新チームにおいてその大半が夏の公式戦をあまり経験していない。前チームが成績を残したため、ただでさえプレッシャーがかかる新チームの最初の大会。そこに経験不足が重くのしかかる。
夏に甲子園に出場したチームは他の学校より、長ければ1か月、新チームへの移行が遅れる。秋以降もチームに残る選手は甲子園の舞台で貴重な経験を積むことができるが、夏の大会で勝ち上がれば勝ち上がるほど、新チームの底上げに割く時間は短くなる。
たとえ強豪校であっても、個々の能力や技術だけでは勝てない。バッテリーの呼吸、内、外野の声かけ、方針の徹底……。新たに船出するチームの完成度が低ければ、早い段階で敗れ去ってしまうことも十分に起こり得る。敗戦の弁は「十分な調整期間がなかった」「準備不足だった」。それ以外の言葉は見つからないだろう。
「秋の初戦は本当に怖い」
この夏の甲子園に出場し、全国でいくつか勝ち上がったある学校の監督は「秋の初戦は本当に怖い。練習してきていても、足りないことが山ほどある」と語っている。同校は秋の大会まで実戦が少なかったために、エラーや凡打などはもちろんのこと、サインミスや連携のミスを連発しながらもなんとか勝利。「大会をやりながら強くなっていくしかない。秋は生き残ることが大切だと感じています」とも語った。
旧チームに徹底的に目指す野球を叩き込んでいても、メンバーが代われば同じことができるとは限らない。一から野球観を教え込まなくてはいけない。強豪高校であっても時間が必要なのだ。
春夏連続出場はあっても、メンバーがガラリと代わるチームの夏春の連続出場は難しい。だが、裏を返せば、センバツの出場を逃したチームは夏に向けた準備期間が長くなる。実際に今夏の覇者、大阪桐蔭も昨年の秋、大阪府大会ではコールド負け。新チームのスタート時の悔しい敗戦から這い上がって来た。
今秋も続々と波乱が起きているが、新チームの始動時点で勝てなかったからといって来年の可能性が消えるわけではない。その敗戦から再出発し、地道に力をつけたチームが来夏の舞台で光り輝いているかもしれない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count