黒田博樹の去就を左右する「199」という数字 現役続行か、引退かで揺れる39歳の胸中とは

「199イニングというのが自分の中でも何か考えさせられる」

「今年も200はいかなかったですけど、そこ(199)までいけたっていう部分の自信というのもありますし、そういう色んな部分が判断材料になってくる。39歳のシーズンで200イニング近く投げられたというのは、来年に対しての自信には多少なりともなるとは思います」

 この1イニングが足りなかったからといって、黒田への高い評価が変わるものではない。一方で、本人は意味深な言葉も残している。

「199イニングっていうのが自分の中でも何か考えさせられる(笑)。でもね、あの1イニングが、200イニングを達成してれば、ジーターのサヨナラヒットがないわけなんで、それはそれで自分なりにポジティブに考えようかなと思います」

 こう言って報道陣を笑わせたのだ。

 黒田の今季最終登板は、ヤンキースの本拠地最終戦だった。今季限りで引退したデレク・ジーターのヤンキースタジアム最終戦として異様な雰囲気に包まれた試合は、周知の通り、主役のサヨナラヒットという劇的な幕切れでヤンキースが勝利した。

 この日、黒田は8回まで3安打2失点という快投を見せたが、95球で降板していた。そして、9回表に守護神のロバートソンが3点差を追いつかれたことで、その裏のジーターのサヨナラヒットが生まれた。黒田が続投してれば、9回表で試合は終わっていただろう。

 この歴史的な瞬間を演出した1イニングが黒田にどんな思いを抱かせるのか。届かなかったことで多少なりとも衰えを感じ、引き際と感じるのか。満足感を抱かせるのか。それとも、来季へのモチベーションに変わるのか。

 ヤンキースは黒田の働きを高く評価しており、契約延長のオファーを出す可能性が高い。一方で、メジャーの他チームも計算できる右腕を放っておかないだろう。古巣の広島も毎年、かつてのエースにラブコールを送り続けている。

「やっぱりオファーがないと始まらないことなので。野球人としては、オファーがなければ、それはもう退くときだと思いますし。オファーがあっても自分なりに色々考えないといけないこともあります。ただ、色んな選択肢があるということは、野球人として幸せなことですし、それが1年間、苦しい中でも頑張ってきた自分が報われる部分だと思う。まずはそれがないと色々考えられないですね」

 黒田が「幸せなこと」と表現する状況になることは確実だろう。そこでどんな思いが芽生えるのか。チーム内、そしてファンの間では、ヤンキースでの現役続行を望む声は多い。今年も「幸せ」と「苦悩」が交錯するオフになる。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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