高校野球で代打・俺! 指揮官不在のPL学園が見せた意地
大阪桐蔭との決勝で指揮を執った奥野が代打本塁打
各地区で来年のセンバツ甲子園に向けた戦いが繰り広げられている。この夏、甲子園を制した大阪桐蔭も4日、大阪府大会決勝(舞洲スタジアム)を戦い、11-4でPL学園に勝利。夏春連覇へ順調に勝ち進んでいる。
大阪桐蔭が優勝する一方でPL学園の戦いも称えられるべきだろう。采配を振る監督は夏に続き、不在。正井校長がベンチに監督登録で入っている。まだ後任監督の目処は立っていない。
この決勝戦は、そのPL学園に見逃せないプレーがあった。
試合は9回を迎え、2-11と大阪桐蔭に大量リードを許していた。校長は大会に出るだけで、指揮を執るわけではない。そのため、PL学園は控え選手が監督の代わりにサインを送っている。この秋は奥野泰成選手がその役割を担っていた。
最終回、先頭打者がヒットで出ると、奥野はタイムをかけて、代打に自分を送り、静かに打席に入ったのだ。
ずっと集中力を乱さずに、試合に入っていたからだろう。奥野は迷わずバットを振り抜くと、打球は左中間スタンドへ。意地の2ランにスタジアムは沸いた。選手兼任監督による「代打・俺!」の成功だった。最終的に試合をひっくり返すことはできなかったが、見ているファンの心と選手たちの気持ちは震え、揺れ動いた。
甲子園の夢が断たれたわけではない。大阪桐蔭とPL学園は近畿大会に駒を進める。センバツ代表の参考となる戦いだ。近年は有力選手がPL学園ではなく、大阪桐蔭をはじめとする他県の強豪に進学するなどの影響で甲子園から遠退いているが、PL学園の選手が動かす野球を甲子園で見ることはできるだろうか。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count