ロイヤルズの快進撃を支える強力な武器 23歳新鋭の衝撃のスピード

29年ぶりの世界一を「足」で勝ち取れるか

 エンゼルスと対戦した地区シリーズ第2戦、9回にバトラーの代走として登場したゴアは、すぐに二盗を決めたわけだが、代走のスペシャリストが二塁に到達した頃、エンゼルス捕手のアイアネッタが投げた球は投手の頭上をようやく越したあたり。アイアネッタの二塁送球はほぼ完璧だったが、それでもゴアを刺すことはできなかった。

 メジャー昇格を果たして以来、レギュラーシーズンは11試合に出場し、わずか2打席しか立っていないが、5盗塁5得点を決めている。本来の守備位置でもある左翼に就いたのは2試合で合計4イニング。プレーオフでは打席にも立たず守備にも就かず、代走のみの出場が続くが、期待通りに足で違いを生み出している。

「自分はスピードを見込まれたからこそ、今このプレーオフの舞台に立っていられるんだ。代走のスペシャリストとして、少しでも対戦相手を嫌がらせることをして、チームの勝利に貢献できれば、これ以上幸せなことはないよ」

 走塁を担当するクーンツ一塁コーチの存在も忘れてはならない。ゴア曰く「データの宝庫」というクーンツ一塁コーチは、相手投手のクイックモーションの速さや捕手の肩の強さはもちろん、わずかなクセもすべてを把握しているという。

「コーチのおかげで、自分の仕事が何倍も楽になっている。今まで出会ったコーチの中でも、ここまで投手を研究して、データを頭にたたき込んでいる人はいない。もうホントにオタクの域に達してるくらいだよ(笑)」と全幅の信頼を寄せる。

 球団史上唯一無二のワールドシリーズ制覇を果たした1985年以来、29年ぶりとなるプレーオフを戦うロイヤルズは、このまま世界一決定戦にコマを進めることができるのか。ゴアの足が1つのポイントとなりそうだ。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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