【パ×Full-Count】東北930万人をファンに 創設から10年経過、楽天の新たな挑戦
13年以降、東北全6県で楽天が人気球団トップに
チームごとの結束力が高まり、他県のチームには負けられないという意識も芽生えた。これにより、各々が担当する県に対する活動も積極性を増していった。球団が初の日本一に輝いた13年シーズン終了後に慰労をかねて職員全員で合宿を実施した際も、「日本一愛される球団とはどんな球団なんだろう」と熱く語り合ったという。
そうやって職員の意識を変えていくとともに、選手の意識改革にも着手していった。
「選手に対しても常に『東北、東北、東北』と事あるごとに言い続けて、たとえばヒーローインタビューでは『仙台のみなさん、宮城のみなさん』と呼びかけないで、『東北のみなさん』と呼びかけるように促しました。我々は東北のチームなんだと言い続けるようになったのも2012年の12月以降ですね。
そうすると選手も東北を意識し出して、ちょうど優勝もあって東北のファンの方に応援していただいているというのを選手も肌で感じたんです。それがうまくマッチして、優勝した時には選手の方から『東北のファンの方にお礼がしたいので東北に行くファンのイベントを作ってください』と要望が出てきました。我々も考えていたので上手い具合にマッチしましたね。まず自分たちの意識改革をするのが大切なんだなと改めて感じました」
江副部長はそう振り返る。
球団職員、選手、スタッフの意識が東北へと向き始めたタイミングで初の日本一に輝き、楽天のファン層は一気に宮城以外の5県にも広がっていった。その証拠に、12年までは東北各県のファン意識調査で巨人や阪神などが上位に来るケースが多かったが、13年の調査では東北全県で楽天がトップとなり、成績が低迷した昨季もその地位をキープしている。
「アンケート結果を見ると優勝したというのが大きな要素としてあるとは思いますが、各地の方々と話していると優勝したタイミングと我々がろっけん活動で東北を意識したタイミングと、各地での活動に力を入れたタイミングとすべてがうまくマッチしているのかなと感じます。本当にたまたまなんですが……。2012年の12月に『東北ろっけん活動』を宣言した時に秋田や青森の自治体の方にあいさつにいくと、『宮城のチームでしょ』とみなさん、おっしゃっていたのが、今はどこに行っても『東北のチームだよね』とおっしゃっていただけるようになりました。みなさまの意識の中に東北のチームというのが浸透し始めているのを感じています」
江副部長はそう手応えを口にする。
だが、東北全域に楽天を売り込む活動はそう簡単なことではない。例えば、13年以降、地元の人々とのコミュニケーションを図るべく、球団職員が東北6県の夏祭りに参加するようになったが、移動の行程だけでも過酷。14年は岩手県の盛岡さんさ踊り、宮城県の気仙沼みなとまつり、仙台すずめ踊り、秋田県の竿燈まつり、福島県のわらじまつり、山形県の花笠まつり、青森県のねぶた祭と参加。山形花笠まつりでは、立花社長をはじめエンジェルス、チアリーディングスクール山形校の生徒、クラッチ、職員ら約60人がオリジナルの花笠音頭を踊ったため、事前にかなりの練習を積んだという。