【小島啓民の目】変革を恐れず、先を見ろ 野球上達へ「5年後ビジョン」設定のススメ

40歳を超えてメジャーの第一線で野球をやれるイチローの姿勢とは

 更に、人間の体は、良い方にも悪い方にも日々、変化しています。良かった時の体の状態と現在とでは、全く同じということはありません。もちろん、対戦する投手や打者によって対応していくことも状況への適応ということになるでしょう。このように、少なからず状況が変わっているという認識があれば、技術もそれに併せて微調整を行う必要が出てきます。

 ジュニア期の選手の体の柔らかさを大人に求めるのは酷で、大人のパワーをジュニア期の選手に求めるのは論外でしょう。このように、その都度、状況が変化しているのを知ることは非常に大事です。

 イチローが「日々進化を求めています」と言っていた気がしますが、彼の打撃が毎年少しずつ違っていると見えるのは、私だけではないでしょう。構えた時のバットを傾ける角度や、足を上げるタイミングなど細かい部分ですが。年齢から来る体の衰えをテクニックでカバーするという姿勢で取り組んでいると私の目には映ります。それでなければ、40歳を超えてメジャーの第一線で野球をやれないでしょうね。

「変わろうとする」ことは常に前向きな姿勢であり、「変わらないように維持する」ことは終わりが近づくとも言えます。変革を恐れず、というのはスポーツの世界では非常に大事なことです。そのためには、日ごろから自分を自分で理解するという癖を身につけることも求められます。良い選手は、そんなことが自然と身についているような気がします。

【了】

小島啓民●文 text by Hirotami Kojima

小島啓民 プロフィール

1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年~2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。

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