注目高まるNFLとMLBの「二刀流」 波紋呼ぶスターQBウィルソンの発言
レンジャーズGMは本人にプレーを要望、本人も二刀流に自信
「成績はそこまで気にしていない。自分はメジャーレベルでも十分にプレーできると思う。自分の練習に対する姿勢だったり、他のあらゆる要素を考えてみても、野球を続けていれば必ずメジャーに行き着いていただろう。だからこそ、レンジャーズは自分の権利を獲得したんだと思うんだ。それに、レンジャーズは野球をプレーしてほしいと言っている。GMのジョン・ダニエルズは僕にプレーしてほしいと言っているんだ。先日もその話をしたばかりだよ」
この発言を聞いて、気が気じゃないのはシーホークス関係者だろう。シーホークスのジョン・シュナイダーGMは「ラッセルの最大の魅力は、自分に対する自信の深さと、目標や夢、やる気の高さだ」とウィルソンの意欲を称えながらも「正直なところ、二刀流は現実的とは思えない。現在、NFLで置かれた彼の状況を考えてみても難しいだろう」と否定的。確かに、現状では二刀流を実現させるには数多くのハードルを越えなければならず、可能性はほぼないに等しいだろう。
MLBとNFLの二刀流に挑戦した選手といえば、ボー・ジャクソンとディオン・サンダースが有名だ。「メジャーリーグが本業で、フットボールは趣味」と話していたジャクソンは、1989年にはMLBオールスターゲーム(ロイヤルズ)に出場し、1990年にはNFLプロボウルに出場(レイダース)。両競技の球宴に出場した唯一の選手として名を残している。
一方、1989年にNFLアトランタ・ファルコンズとMLBアトランタ・ブレーブスに所属したサンダースは、9月に「同じ週にホームランとタッチダウンを記録」という偉業を達成。まるでマンガにでも出てきそうな列伝ぶりだが、今、この型破りな活躍をする可能性を秘めているのは、やはりウィルソンなのかもしれない。奇跡的にいろいろな条件がクリアになり、1シーズンだけでいいからウィルソンが二刀流に挑戦できる日が来ないものかと、密かに願っている。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
佐藤直子 プロフィール
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。