黒田博樹の「不運」を検証する 右腕はなぜ援護に恵まれないのか

黒田に対する援護の少なさに影響を及ぼしていた要素とは

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黒田博樹のシーズン別援護率と相手先発投手の能力

 では、黒田投手の援護率は、すべて偶然決まったものなのだろうか。すべてを説明できるものではないが、1つの理由だと言えそうなのは、対戦相手の先発投手のレベルだった。

 この図は黒田投手のMLBでの7シーズンを、援護率が高かった2009年(5.82)、低かった2010、11、13年(3.17~4.37)、中程度だった2008、10、12年(4.61~4.83)の3つのグループに分け、それぞれの年にどんなレベルの先発投手と対戦したかを調べたものだ。

 先発投手のレベルにはWAR(Wins Above Replacement)を用いた。これは投手の投球内容と登板イニング数(稼働量)から算出する投手の総合指標で、双方が整っている投手ほど高くなる。

 シーズンを通してローテーションに入ったような投手の数字は高くなり、シーズンの一部だけ登板機会を得たような投手の数字は抑えられる。例えば2014年の黒田投手は3.4 (32試合11勝9敗)、田中将大投手(ヤンキース)は3.1(20試合13勝5敗)といった値になる。(計算方法は複数あるが、コンセプトは共通している)

 援護率の高、中、低のグループごとに、どのようなWARの値を記録した投手と対戦したかを調べたのが次の図だ。(複数シーズンが含まれるグループは平均値でグラフをつくっている)

 わかりやすい傾向があるのがわかるだろう。7シーズンの中で援護率が唯一5.82と高く跳ね上がった2009年は、WARが4以上、すなわち黒田投手や田中投手以上の成績を残したエースクラスとの対戦がなく、WAR1未満の控えレベルの投手との対戦が多かったことがわかる。

 逆に最も援護率が低かったシーズンのグループでは、WAR4以上の投手との対戦がもっとも多かった。黒田投手の援護率の出方には、高いレベルの投手と投げ合った試合数の影響があると推測される。

 いい投球をしているのに打線の援護に恵まれない試合が続くと、そうした結果に投手自身の“何か”が影響しているかのように思えてしまうこともある。しかし、打線の援護は投手自身がコントロールできるものではないと考えるべきものだ。そんなときはそうした投手と援護を受けている投手の間で、対戦投手のレベルがどう異なるかを比べてみると、多少納得できる結果を得られるかもしれない。

【了】

DELTA・Student●文  text by DELTA Student

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。http://www.deltacreative.jp

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