「イチローにやられた」 走者だけでなく、球場全体を幻惑した“トリック”
走者アリアスは脱帽「あんなプレーは見たことがない」
レジェンドの圧倒的な判断力とベースボールIQについて、解説者がまくしたてる間、サードベース上で悔しそうに首を横に振るアリアスと、サングラス越しにしてやったりの表情を浮かるイチローの明暗を、テレビカメラは何度も交互に捉えていた。
マイアミ・ヘラルド紙によると、イチローは「もしも、あそこで振り返っていたら、得点になるのは分かっていました。頭上を越えるのは分かっていたので、僕の焦点はいかにランナーに僕がキャッチできると思わせるか、でしたね」と語ったという。
一方、MLB公式サイトでは、騙されたアリアスの「イチローにやられた。間違いない。あんなプレーは見たことがない」というコメントが紹介されている。もし、そのまま敗れていれば“戦犯”となるところだったメジャー10年目の30歳は、素直に敗北を認めていた。
マリナーズ時代の2007年、このAT&Tパークで行われたMLBオールスターゲームでイチローは球宴史上唯一のランニングホームランを放ち、MVPに選出された。くしくも、伝説のシーンは、この日のイチローが妙技を見せたライト方向への打球がフェンスで不規則な跳ね返り方をして生まれたものだった。逆転負けは止められなかったが、主砲スタントンの休養で今季初めて守った本職のライトで、レジェンドはサンフランシスコに再び逸話を残した。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count