【緊急連載(上)】東大はなぜ勝てたのか 94連敗を止めた攻撃的野球
決して高くない選手の能力を見極めた勝つための戦略
山本は見事にセンター前ヒットを放つ。すると、ここで浜田一志監督は迷わず代走を送った。投手を打席に立たせながら、出塁した途端、あっさりとベンチに下げた。指揮官はその意図をこのように説明した。
「投球としては打者2巡までと決めていたので、代えるつもりだった。でも、代打を出すより、うちの野手陣だったら山本の方が打つだろうと思ったので、そのまま打たせた」
東大ならではの采配だろう。野手といえども確実性のある選手は少ない。ならば、投手であってもスイングの鋭い山本に打たせてしまう。決して高くはない選手たちの能力を冷静に見極め、勝つための戦略が練られていた。
実際、この回に1死二、三塁まで進めると、暴投の間に2者が生還して逆転。勝利への機運を一気に高めることになり、接戦への序章となる重要な采配につながったのだ。
積極的な攻撃野球で1勝への流れを呼び込んだ東大。その一方で、法大にはこの試合、受け身にならざるを得ない理由があり、就任1年目の青木久典監督の采配にも綻びが生じていった。
フルカウント編集部●文 text by Full-Count