戦力外覚悟の力投、メジャーで“居場所”守る和田毅のシビアな本音

「監督やフロントだったら、そうしますよね」

 そろって左腕でもある和田とウッドは、本来スプリングトレーニングで先発5番手の座を争う関係だった。今季年俸が400万ドルの和田に対し、ウッドは568万5000ドル。カブス首脳陣は、開幕を前に苦渋の決断を迫られるところだったが、渡りに船、和田の故障に伴い、決断が先送りされた経緯があった。

 和田が打ち込まれた6月5日ナショナルズ戦、6月11日レッズ戦で、2番手としてマウンドを受け継いだのは、他でもないウッドだった。ロングリリーフとして登板し、ナショナルズ戦では2回を無安打無失点、レッズ戦では2回1/3を1安打無失点に抑え、壊れかけた試合を立て直した。先発ローテの座を争っていた、いわばライバルに、自分の尻ぬぐいをしてもらった形だが、この状況を和田自身はどう感じていたのだろう。

「監督やフロントだったら、そうしますよね。ロングリリーフとして左のウッドと右のEJ(エドウィン・ジャクソン)がいる。左腕の僕が崩れたら、そこには左のウッドを入れて、右腕が崩れたらEJ。先発が崩れた時のバックアッププランとして、そういう使い方をすると思う。広い視野で見たら、選手一人一人はコマですから。チームが勝つためのコマを揃えて、使っていく。使えないコマがあったら、代わりとなるコマはいくらでもある。そこはビジネスですから」

 時間が経ったからこそ、状況をより冷静に判断できているのかもしれないが、自分の置かれた状況を客観的に見ることができるのが、和田の強みだ。少し冷静すぎるくらいの目を持って、最悪のケースを覚悟しながらマウンドに立つ。この客観的な視線が身についたのは、野球というビジネスは、自然発生的な世代交代を経ながら存在し続ける事実を、その真っ只中で感じ続けてきたからだ。

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