【高校野球】優勝候補に大金星 今大会最大の大番狂わせ導いた三塁コーチャーの“目”
職人と呼ぶにふさわしい背番号16の仕事ぶり
「例えば、人混みを歩いていたら、すれ違う人にどんな人がいるか、チェックするんです。人間、いろんな種類のヒトがいるけど、だいたいどんなタイプかに分かれる。それを『試合ならこういうタイプかな』と当てはめたりして、やってきました」
この日の試合中も「職業病」が出ていた。スタンドに目が行き、自然と人間観察していたという。
「ちょっと体の大きなおじさんが目につきました。『高校野球、大好き』って感じの方でしたよね」
そんな高い意識を持った2年生を、宮本健太朗監督は「選手ではなく、コーチャーとしてベンチに入れている。他の子にはないものを持っている」と評価する。指揮官の期待に応えた上嶋は試合後、小さな体で大きく胸を張った。
「智弁和歌山は全体の能力は高いし、力強さもある。それが荒さにつながり、細かいところに足りないところがあるとも思った。今日は自分たちの野球ができた結果です」
たゆまぬ努力に裏打ちされた「眼力」に加え、打席に立つことがなくてもグラウンド上で起こることのすべてを結びつける「集中力」。職人と呼ぶにふさわしい背番号16の仕事ぶりが、大番狂わせの陰でキラリと光った。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count