【高校野球】早実・清宮幸太郎は何がスゴイ? 甲子園での61球から見えること

ボールの選び方&コンタクト状況から見えること、清宮はさらなる飛躍を遂げられるのか

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早稲田実・清宮幸太郎選手への61球 スイング・コンタクト状況

 最後に、各ゾーンへの投球に対し清宮選手がどれだけスイングしていったか、その際どれだけバットにボールが当たったか(コンタクトしたか)を見ていく。

 一目してわかるのは、ストライクゾーンのボールに対しかなり積極的であることだ。22球のストライクのうち18球を振っている。一方でボールゾーンの球の見極めもできており、39球のボール球のうち振ったのは9球に過ぎない。ストライクゾーンを管理する力に関してはかなり高いレベルにありそうだ。

 打てる確率の高いボールを待つことができ、いざそうしたボールが来たならしっかり叩けるというのは得がたい才能だ。学年が上がれば警戒される場面は増え、打席で打てるボールが来るチャンスは減るとみられる。だが、今大会で見られた傾向が清宮選手の資質に由来するものならば、引き続き活躍するかもしれない。

 また27回のスイングで3回と空振りの数も非常に少ない。長距離打者でありながらボールをバットに当てるコンタクト能力の高さ、バットコントロールの巧さもうかがわせる。これはストライク、ボールどちらにも共通していえることだ。

 高いコンタクト能力で安打を重ね出塁をもたらし、選球能力をうかがわせながらも、比較的早めの仕掛けで打つべき球を打てる。打てば1年生ながら安打の半数が長打。パワーの部分については今後さらに上昇する可能性を秘める。率直に優れた選手である。

 守備位置が各チーム強打者のそろいやすい一塁手であり、差を生み出しにくいというのはほぼ唯一の難点だが、圧倒的な打撃力を見せてそのマイナスすらも吹き飛ばせるかは今後のポイントになる。新チームでは三塁転向が噂されているが、それに成功すれば早稲田実業に小さくない価値をもたらすはずだ。

DELTA  http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。http://www.deltacreative.jp

【了】

DELTA・大南淳●文  text by DELTA OMINAMI,J.

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