ヤンキース、迫る決断の時 エース田中の離脱を「けがの功名」にできるか

ポストシーズンに向けて田中が示す心強いデータ、理想的な起用法は…

 現実的にヤンキースの逆転優勝が厳しい状況であることを考えれば、残りのシーズンでの登板を1試合に留めて万全の状態でマウンドに上げることが得策のように思える。先発を2度飛ばして30日か10月1日に復帰すれば、中4、5日の通常間隔でワイルドカードゲームに臨むことができる。チームの遠征に帯同していない田中は本拠地で通常通りの練習メニューをこなしており、首脳陣は24日(同25日)の医師の診断を受けた後に決める見通しだ。

 いずれにせよ、3年ぶりのプレーオフ進出の鍵は2年目のエースが握っているといっても過言ではない。9月は4試合に先発して2勝1敗、防御率2.30と抜群の安定感を示している右腕に対する信頼は高まっている。日本の楽天時代に優勝経験のある田中について、ジラルディ監督は「彼は重圧のかかる試合を楽しんでいるようだ。そういう試合を日本で何度も経験している」と期待している。

 そして、ポストシーズンに向けて心強いデータがある。田中は今季、中4日で5試合投げ、防御率2.56と好成績を残している。首脳陣は今季、肘に不安のある右腕の状態を気遣い、中5日以上空けての登板が多かった。

 ロスチャイルド投手コーチは「2年目でメジャーの調整に適応している段階だが、いい方向に進んでいる。中5日での調整に慣れて流れをつかめば、中4日への適応もしやすくなるからね」と話す。短期決戦でエースはフル回転を要求されることが多いだけに、中4日の登板で好結果が出ていることは心強い。

 残り11試合でブルージェイズとは3.5ゲーム差。キャッシュマンGMは今週末時点でのチーム状況を見てローテーションを再編する考えで、ワイルドカードゲームに目標設定を切り替え、そこに田中の登板を合わせてくるはずだ。ヤンキースとしてはエースの一時離脱を「けがの功名」にしたいところだ。

【了】

伊武弘多●文 text by kouta Ibu

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