優しくも貫き通した「頑固」な一面 木佐貫洋が歩んだ野球人生

本人は自覚なしも…「木佐貫を交代させるのは一苦労」

 木佐貫は負けた。その悔しさから、練習が厳しい亜細亜大学の門をたたき、成長。甲子園に出場こそしていないが、松坂世代を代表するピッチャーになった。

 頑固な性格からか、野球の神様はリベンジの機会を用意してくれた。日本ハム移籍後の2013年5月20日の巨人との交流戦。木佐貫VS杉内の先発対決が実現し、7回1失点で勝利。あの夏の借りを返した。「(川内)高校の野球部みんなが、応援してくれていました」とバックで同級生たちが守っている気分で“鹿児島実業”に勝った思いだった。

 プロに入ってから、優しい性格が災いし、なかなか勝ちきれないなどという声も上がったが、試合中の木佐貫も頑固だった。ある投手コーチは「木佐貫を交代させるのは一苦労です」と明かす。ピンチを作ったところで、交代をコーチが告げにいくと、「嫌です」と断られることもあった。任されたマウンドを必死に守ろうとしていたのだった。

 頑固な性格という自覚はない。「僕が頑固ですか……そうですか?娘が魚を食べないときに、ひたすら食べるまでずっと目の前で僕が箸を口の前に持っているということがあるくらいじゃないですか」と気さくに笑う。すべてはその家族のため、愛した野球のファンのため、貫き通した「頑固」だったのかもしれない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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