MLBがダグアウトでのiPad使用解禁 「iPadを好むか、バインダーを好むか」
「正直なところ、まだ良さが分かっていない」
「正直なところ、まだ良さが分かっていないんだ。iPadをダグアウトに持ち込むことで、どんなアドバンテージがあるのか見極めようとしているんだが。ダグアウトにあるものはすべてダグアウト仕様、つまり即効性に優れていなければならない。ユニフォームのポケットに入れてある小さいメモなんか、言ってみれば、簡単なiPadみたいなもの。ポケットに入っているメモに載っていない情報がiPadから取り出せるかと言ったら、それはできない。
ジョニー(マリー打撃コーチ)はジョニーで必要なデータは持っているし、デービー(マルチネス・ベンチコーチ)も自分の必要なデータを持っている。他のスタッフもみんなそうだ。だから、iPad導入なんていうと、今はちょっと格好良く聞こえるかもしれないが、正直なところ、情報が欲しい時にiPadを見ているようじゃ、ちょっと遅い感じがするよ」
パイレーツのハンティントンGMは、地元メディアに対して「iPadを好むか、昔ながらのバインダーを好むかは、個人の好みとしかいいようがないんじゃないかな」と話しているが、現状としては、その評価がピッタリと当てはまりそうだ。
アストロズを率いるヒンチ監督は41歳、カージナルスのマシーニー監督は45歳と、最近は40歳代の若手監督が増えてきているが、監督やコーチ陣はまだ50歳代を超える面々が多い。自分で手書きしたメモに親しみを持つ「オールドスクール」が大半だ。同時に、子供の頃からiPadやコンピュータが身近にある世代が、選手の大半を占める時代が近づきつつある。すべてがデジタル化する時代の流れは、メジャーのダグアウトにも押し寄せているようだ。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。