打球速度の最速は194キロ? MLBで定着、打者の実力を測る新ツール「EV」
EVを使って選手を評価する球団も
元々、本塁打の飛距離が長打力を測る上の一般基準とされていたが、EVは結果にとらわれない「打力」を数値化したものとみなされている。Statcastが集計したデータをメジャーリーグの公式サイトで見ることができる。
このEVを使って選手を評価する球団も増えてきた。中でも、ナ・リーグ優勝決定シリーズに進出したメッツは重視する。一昨年に、ルーカス・デューダとアイク・デービスという同タイプの左の一塁手候補がいたが、最終的にEV値の高かったデューダに定位置を与えた。翌年、デューダは32本塁打を放つ活躍で中軸打者に成長し、デービスはパイレーツに放出された後、アスレチックスに移籍。最近2シーズンで計14本塁打と伸び悩んだ。
EVをうまく活用できたケースとして残っているが、成功例ばかりではない。ヤンキースが同様の理由で今季春先から不振だったスティーブン・ドルー二塁手を我慢して起用したが、打率2割1厘、OPSも6割5分2厘と最後まで調子は上がってこなかった。
アスレチックスのマネーボールが脚光を浴びて以降、セイバーメトリクスを駆使したデータ分析は一般ファンにもお馴染みとなった。野球に関する細かいデータを提供するウェブサイトが数多く存在する米国。今年、野球の醍醐味であるホームランをより深く分析するためのツールとしてメジャーリーグ中継でうまく使われるようになり、EVへの関心も一気に高まった。投手の球速のように、打者の実力を測るスタッツとして定着しそうだ。
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伊武弘多●文 text by Kouta Ibu