世間を驚かせた巨人杉内の大減俸 決断の裏にあった葛藤と男気
杉内が見せた我慢強さ、来季復活のマウンドに上がれるか
わずかシーズン6勝、前半戦でチーム離脱という結果を見れば、批判されるのも仕方ない。一方で、よくこんな下半身と精神状態で、6勝も挙げ、我慢を続けてこられたと話す関係者もいる。実際、杉内は今季の最終登板となった7月21日の阪神戦は6回途中まで投げ、2失点。まずまずの内容を見せていた。
入団時から「僕は痛い、かゆいはそうは言わない」と痛みに強い投手だったが、その翌日に投手コーチに股関節の痛みを自ら訴えて、登録抹消となっている。以降、ランニングもできなければ、キャッチボールすら、しっかりとできていない。今回の大減俸も驚きだが、それほどの痛みの中、意地で投げていた我慢強さも忘れてはならない。
このまま「保存療法」で股関節を維持してもパフォーマンスは上がらない。手術をしても復帰ができる可能性は分からない。それでも前に進まなければ何も始まらないと手術を決断した。
その決断も一人ではできない。球団も来年活躍できる保障がない選手に、手術を簡単に容認するわけにはいかない。費用も、来季以降の年俸もかかる。選手によっては、手術をすれば治るケガでも、球団が手術を受け入れず、戦力外と宣告するケースもある。それでも、巨人は杉内の要望を受け入れた。杉内は球団へ恩義を感じていたことが減俸の申し出につながっている。
35歳の左腕は手術という少ない可能性にかけた。それでもだめなら引退するという覚悟がにじむ。自分の年俸分はこれからの若い選手に使ってほしいという願いもあるのだろう。4年契約の最終年だった杉内との契約延長にも、決断を応援し、復活を期待する球団の思いが見て取れる。
乗り越えなければならない壁は低くない。ただ、杉内は常々「背番号18として恥ずかしい姿を見せることはできない」と話していた。その思いが、リハビリと復帰を後押しすることになるはずだ。杉内と球団の決断は奏功するのか。来季、背番号18が復活のマウンドに上がる姿を期待したい。(※金額は推定)
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count