過酷競争も勝機あり カブスマイナー契約の川崎はメジャーに這い上がれるか

マドン監督のスタイルにもはまる川崎の性格、シカゴ市民のハートを独り占めする日も

 実は、今オフを通じてバエツの名前がトレード候補として挙げられている。打撃センス抜群のバエツは、高い集中力が保てている時は、これまた素晴らしい守備を見せる。2、3年前までは「カブスの将来を背負って立つ選手」と期待されたが、凡ミスの多さや怪我に泣かされ、期待通りの成長を遂げることができなかった。

 昨季もシーズンの大半は3Aで過ごし、ロースター枠が拡大した9月にメジャー昇格。28試合に出場し、打率2割8分9厘とまずまずの成績を残した。カブス・ファンの間では、過去の人になり始めているバエツだが、まだ23歳。まだまだ伸びしろはあると考える球団は多く、トレードの噂が絶えないというわけだ。

 これからキャンプインまでの期間、あるいは開幕までの期間にトレードされる可能性は十分ある。もしバエツがトレードされれば、川崎には願ってもない追い風となるだろう。

 いったんメジャー契約を勝ち取り、25人枠に入ることができれば、川崎がそのままメジャー定着することも夢ではない。

 DH制が採用されていたア・リーグとは異なり、投手が打席に立つナ・リーグの場合は控え野手の出場機会が多い。代打であれ、代走であれ、守備固めであれ、川崎の持つ長所を生かす場面は増える。さらに言えば、カブスのマドン監督はチームの和や明るい雰囲気、ポジティブな言動を高評価する人物だ。川崎の「試合に出ていなくてもチームと一緒に戦っている」という姿勢は、間違いなくマドン監督のスタイルにはまる。

 他選手のトレードや怪我を期待することはできないが、全力を尽くしながらどんなチャンスでも利用し、メジャー契約を勝ち取ること。越えなければならないハードルは高いが、これさえクリアしてしまえば、エース左腕レスターや新人王ブライアントを差し置いて、川崎がシカゴ市民のハートを独り占めする日がやってきそうだ。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

佐藤直子 プロフィール

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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