あの甲子園の涙から2年 悲運の二塁手のその後と指揮官の思い
2年前、息詰まる熱戦はまさかの幕切れに―
「お前のせいで負けたんじゃない」
あの夏、市和歌山の半田真一監督は泣き崩れる二塁手・山根翔希内野手(当時3年)にずっと言い続けた。
2年前の第96回全国高校野球選手権大会。記憶している高校野球ファンも多いかもしれない。
市和歌山は1回戦で鹿屋中央(鹿児島)と対戦。試合は息詰まる接戦で1-1で延長戦に入った。12回1死一、三塁。鹿屋中央のサヨナラのチャンス。守る市和歌山は三塁走者がスタートを切ったら本塁へ送球、走らなかった場合は二塁で併殺を取るという守備隊形を敷いた。
しかし、甲子園に潜む魔物がここで姿を見せる。
詰まった打球が二塁手・山根の前へ。捕球し、本塁へ送球すると思われたが、一塁へ送球してしまう。その間に三塁走者はサヨナラのホームを踏んだ。鹿屋中央ナインも市和歌山ナインも、何が起こったかが分からない。
打球が強いと判断したため、山根は二塁での併殺とホームへの送球を迷った。甲子園という場が冷静な判断を欠く要因となったのか。自分でも予期しなかった判断ミス。山根はその場で崩れ、涙が止まらなかった。「知らない間に一塁へ投げてしまった。自分のせいで台無しにしてしまって申し訳ない」。無情にも最後の夏が終わった。