あの甲子園の涙から2年 悲運の二塁手のその後と指揮官の思い
センバツ目指した近畿大会でコールド負け、監督は自然と同じ言葉を口にした―
「山根はあのプレーのことで嫌なこともあったと思います。でも、今はあのプレーがあったから、頑張れる。見返してやろうという気持ちが生まれてましたね」
半田監督は心の成長をそう振り返る。
2015年、秋。市和歌山は県大会を制して、近畿大会へ駒を進めた。迎えた準々決勝、明石商(兵庫)。勝てばセンバツ出場が大きく前進する試合だった。
0-0の投手戦。先発した右腕・赤羽が1点を失った後、2番手の栗栖が制球を乱し、四球を連発し、6失点。0-7でコールド負けとなってしまった。こんなはずじゃなかった。左腕の栗栖は能力の高い投手。本来の調子とはほど遠い投球だった。甲子園をかけた戦いが重圧となったのか、力が入ってしまった。栗栖は自分のせいで負けたと、泣きじゃくった。
半田監督は栗栖を呼び、2人で話をした。そして、あの時と同じ言葉を自然とかけていた。「お前のせいで負けたんじゃない」、と。
監督は自分の采配を責めた。チームメートに励まされた栗栖は野球への取り組みがさらに変わった。落ち込む暇はなく、向上心を持ってトレーニングをした。近畿の準々決勝敗退は、センバツ出場圏内とは言い難い。しかし、栗栖は絶対にセンバツに出られると誰よりも信じ続けた。自分自身のリベンジをするために。
1月29日。願いは通じ、近畿の最後の枠で、市和歌山はセンバツ出場が決まった。半田監督にとっても、初戦で敗退した2014年以来の甲子園の舞台。「甲子園で1つ勝つということは難しい。経験を生かして、次こそはという思いはあります」と就任してからの甲子園初勝利を目指す。あの夏、山根の流した涙を無駄にはしない。
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フルカウント編集部● text by Full-Count