田中将大、ヤ軍監督の“異例発言”引き出す順調ぶり 3年目飛躍の予感
自信溢れる佇まい、今まで以上に面白い存在に
田中も自分自身がヤンキース先発ローテ陣の中心にいる自覚は強い。だからこそ、ジラルディ監督の内定発表以前から「そこ(開幕戦)を一番に目指して調整していきたい」と話したのだろう。そして、先発の柱という自覚があるからこそ、今季達成したい目標がある。それは「1年間ローテーションを守ること」だ。
メジャー1年目は右肘靱帯の負傷、2年目は右前腕の負傷で戦列を離れたため、これまで一度もシーズンを通じて先発ローテーションを守り抜いたことがない。かの名門ヤンキースで2シーズンを過ごし、先発の柱といわれる存在になったのだから、それは評価されるべきだという考え方もある。だが、どうやら田中の考えは違うようだ。先発投手という役割を担っている以上、ローテーションに穴を開けることなく「フルシーズンしっかり投げることが大事だと思います」と話す。
例え2桁勝利を飾っても、1年間戦い続けるという基本ができなければ、チームに貢献しているという意味合いは薄れてしまう。今年1年を健康に戦うためにどうしたらいいか。右肘の骨棘除去手術に踏み切ったのも、「今年のシーズンを万全な状態で、よりいい状態で戦うために決断しただけ」と言い切る。
果たして、現段階ではその決断は正しかったようだ。オープン戦初登板について「去年なんかよりも全然よかった」と振り返る表情は明るく、その佇まいから自信があふれる。1年間戦い抜くための準備が整いつつある実感があるのだろう。
開幕までのおよそ3週間を怪我なく過ごすことが大前提とはなるが、今季の田中は今まで以上に面白い存在となりそうだ。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。