理想追求か、現実直視か 巨人・高橋新監督はどう得点力を改善すべきか?
得点力改善へ、新加入クルーズの起用法が鍵に?
ここからは実際の起用について考えていく。まず、二塁と三塁を守ると見られるクルーズをいかに起用するか。左投手に弱かった二塁は、守備力は高いがケガの多い片岡治大と、右投手に弱かった三塁は岡本、また衰えの見えはじめた村田修一と、うまく噛み合わせて起用すれば、弱みが消せる可能性はある。この2つのポジションで、高橋監督がどんな選手起用をするかには注目したい。
ただし、クルーズは左投手を得意としており、昨シーズンwRC+で125を記録している。一方で右投手に対しては84と低く、クルーズだけで右投手に対応できていないチーム状況の劇的な改善を望むのは難しそうだ。理想的なのは、三塁は右投手への対応を含め、成長を果たした岡本がレギュラーを奪い、クルーズは二塁の出場機会の一部を担う、という形かもしれない。
そのほかで高橋監督の手腕が試されそうなのは外野の選手起用だ。外野の一枠は長野久義が担うと見られるが、残り2つのポジションは流動的だ。巨人の外野手は左投手への対応に課題を抱える選手が目立つが、それでも固定してレギュラー育成を目指すのか、複数の選手を起用して目前の得点力確保を目指すのか、難しい判断を求められそうだ。
そして最大の懸案は、阿部慎之助の捕手への再コンバートだ。これは、阿部の相対価値を高める決定だが、37歳となる阿部のコンディションを維持しながら出場機会を伸ばすのは簡単ではない。
現在の巨人が、すべてのポジションで左右いずれの投手にも適応できる、高橋監督が“レギュラー”として認めるであろう選手を揃えるのは難しい。理想を追い過ぎればチーム力は落ちるだろう。計算できるベテラン選手の起用で極端な数字の落ち込みを防ぎながら、若手にも適宜出場機会を与え、育成を図っていく??。高橋監督は、そんな難しい采配を1年目から求められることになる。
ただ、冒頭で述べたように巨人のディフェンス力のアドバンテージは大きい。各ポジションにおいて、理想と現実を両にらみした選手起用を行い得点力の最大化に成功すれば、巨人のペナント奪還は十分可能だろう。
【了】
DELTA●文 text by DELTA
DELTA プロフィール
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を2015年3月27日に発売。集計・算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』も2016年にオープン。