なぜ多くの名物アナが存在? メディアも球団の一員、米国の野球放送とは
シーズン中は選手とともに行動、メディアスタッフもチームの一員
日本に比べると、米国では有料ではあるがケーブルチャンネルを契約している人口も多く、全米放送される野球中継の多くが自然に見られる環境下にある。それでも各球団はローカル局と契約をして、全米各地で「ホーム」チームの試合が見られるようになっており、球団ごとにテレビ・ラジオ専用の放送チームが組まれている。彼らは選手、スタッフがシーズン中に使用するチャーター機にも共に乗り、同じ宿泊先に泊まり、年中チームと共に行動する。
最初はメディアの人間がチームと共に移動することに違和感があったが、日が経つにつれて彼らがチームにとってどういう存在なのかを理解するようになった。チームと共に行動し、関係を築いていく上で全国中継では見られない選手の素顔やストーリーを引き出していく。
もちろん、選手とメディアの一線はあるものの、チームの広報的な存在でもある気がする。それでも時に厳しい発言などをして、選手たちから「そこまで言うのか?」という思いをされるときもあるが、最終的にはお互いがプロとしての立場を理解している。厳しい意見があるからこそ、視聴者に向けて説得力が出てくる。
各球団で働くスタッフの名前が綴られている球団公式サイトのフロントスタッフページには、「ブロードキャスティング(放送スタッフ)」という欄の下にラジオ・テレビの解説、実況だけでなく、プロデューサーやエンジニアの名前まで綴られている。球団によっては「ブロードキャスターズ(解説者)」と題して専用ページがあり、それぞれのプロフィールがある。ロサンゼルス・ドジャースの公式サイトに行ってもらえれば分かると思うが、ビン・スカリーさんのプロフィールは通常の選手よりも長いくらいだ。
ローカル局だけではなく、メジャーでは現在、全国放送局のESPN、FOX、TBS、そしてMLBネットワークと契約を結んでいる。放映権の総額をMLBが一括し、30球団に分配する仕組みで成り立っている。
それぞれの放送局では独自路線で中継番組を制作し、ESPNでは日曜夜に放送される「サンデーナイト・ベースボール」、月曜夜の「マンデーナイト・ベースボール」、水曜夜の「ウェンズデーナイト・ベースボール」がある。木曜夜にはMLBネットワークが放送する「サーズデイナイト・ベースボール」、そして土曜日にはFOX、日曜日にはTBSと、曜日によって各チャンネルが全国放送する試合の権利を持っている。
ESPNでは日曜夜に放送する試合に今シーズンから初の女性解説者を起用することを決めた。ジェシカ・メンドーサさんはアテネ五輪のソフトボールで米国代表の一員として、金メダルを獲得。そして解説者としてもキャリアを始め、2015年カレッジ・ワールドシリーズ(大学野球の全米選手権)では解説を担当。昨シーズンも幾度となく「代役」で解説者を務めたが、ESPNは今年から正式に彼女を起用することを決定した。
1つの「地方」だけではなく、全国をターゲットとする放送局は、人気を誇る元選手や独自の人選で視聴者へ野球を提供する。