前田健太、本当の凄さは「観察眼」にあり!? 他球団の研究も「かいくぐれる」
捕手との相性も抜群、前田の数少ない不安材料は?
この先、相手の研究も進んでいくことは間違いない。ただ、野口氏は「他球団が研究したところで、あの観察眼があれば、かいくぐっていってしまうんじゃないかなとさえ思います」と言う。また、女房役の存在も大きいと同氏は見ている。
「A・J・エリスのリードがいいですよ。ジャイアンツ戦で正捕手のヤスマニ・グランダルと組んだ時だけは、前田は少し投げにくそうでした。でも、エリスと組んだロッキーズ戦はほとんど首を振ってない。エリスとしても、専属捕手でやる立場として、ピッチャーを数多く掴めば自分の出場機会が増えます。エリスの場合はすでに(クレイトン・)カーショーを持っているので、必ず5日に1回は先発マスクがありますけど、『前田も』となれば、両エースですからね。エリスの株も上がる。この相性は捨てたくないし、組めばエリスは全部いいピッチングをさせようという気持ちになりますから」
では、現時点で死角はないのか。野口氏は「本当に怖いのは故障」と指摘しつつ、ピッチャーにはつきものの失投の危険性を指摘した。桁外れのパワーを持つバッターがいるメジャーでは、1球が命取りとなる。抜群のコントロールを誇る前田でも、当然、完璧ではない。
「クアーズ・フィールドだからということもあったかもしれませんが、ロッキーズ戦の立ち上がりは、スライダーがすごく不安定でした。例えばボールゾーンに引っ掛けて不安定だったら、まだ打たれることはありません。ただ、真ん中高めに抜けて入っていくボールがありました。それで立ち上がりに捕まってしまうと……。
例えば交流戦のブルージェイズ戦に投げることがあれば、ドナルドソン、バティスタ、エンカーナシオンのような強烈な3人に捕まってしまうと……という怖さはあります。ホームランを40~50発打つ選手は、メジャーでも何だかんだ言って、捕まえているのは失投がほとんどです。しっかり投げ切ったスライダーや直球を『待ってました』と打つ選手はまずいない。逆に完璧なボールを打たれたら、それはそれでしょうがないと思えます。『もう1回やれ』と言って出来るバッティングではないわけですから」
ダルビッシュや田中もメジャーでは被弾が増え、“一発病”に苦しむことがあっただけに、ストライクゾーンに甘く入る失投は出来るだけ減らしたいところだ。
ただ、前田は被弾も4試合で1本のみ。野口氏は「4試合で1失点で1被弾。この上ないスタートですよ」とここまでの投球に舌を巻く。不安材料が限りなく少ない右腕の快進撃は、まだまだ続くのだろうか。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count