ロッテのレジェンド、「オレたちの福浦」が歩んできた果てしなき道のり
「大事なのはチームの勝利」、必ずバットのグリップエンドに書き込む名前
先輩たちの励まし。様々な指導者との出会い。努力と辛抱を重ねて徐々に才能を開花させた。投手から野手に転向。細い体を補うためウェートを積極的に行うようになった。超一流バッターの映像を食い入るように見ては、参考にしてみた。当時だとオリックス・イチロー外野手、広島・前田智徳外野手、メジャーではマリナーズのケン・グリフィー・ジュニア外野手。さまざまな映像を見て、バットを振ってみた。鉄分を吸収することを意識して食事を心がけることでスタミナもついていった。そんな地道な努力の積み重ねがあり、今がある。
「記録についてファンの方が喜んでいるのであれば、それは嬉しいこと。ただ、いつも言うように自分は記録のことは考えていない。それは終わってから振り返ればいいこと。大事なのはチームの勝利。個人の記録を追っかけるつもりはない。だから、この記録も同じ。それよりも、きょう負けた。それが悔しい。でも、ちょっとしたきっかけでチーム状況は変わると思う。後半戦、チームの勝利に貢献できるように頑張るよ」
試合後、淡々と記録のことを振り返り、熱くチームの勝利を願った。そんな男だからこそ、誰からも愛される。スタンドのファンは残り88本に迫る2000本安打達成を熱望する。
福浦が試合で使うバットのグリップエンドに家族の名前が書いてある。そして、2000年に病気のために亡くなった母の名前を書いている。バットを新しくするたびに次のバットにも書く。試合前、丁寧に気持ちを込めて家族の名前を書き込んでいる。それは昔から変わらない大事にしていることだ。
「オレの母は野球が好きでね。マリンにもよく見に来てくれた。いつも見守ってほしいという思い。そして家族のために戦うという気持ちを忘れないために書き込んでいる」
愛する家族と、野球が大好きで、いつも自分を優しく見守ってくれた亡き母を安心させるために、これからも変わらぬ姿勢で打席に立つ。プロ23年目、2047試合に出場した大ベテランはこれからも記録を打ち立てるだろう。それらは、自分を犠牲にしてチームの勝利を優先した中で、達成しているからこそ、さらなる価値を感じる。シーズン後半戦。マリーンズのレジェンドから目が離せない。
(記事提供:パ・リーグ インサイト)
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マリーンズ球団広報 梶原紀章●文 text by Noriaki Kajiwara