都市対抗野球を見守った“ミスター日産” 休部から7年の胸中とは

練習場跡地に立ち並ぶ分譲住宅、「廃部」ではなく「休部」も復活への動きなし

――グラウンドもなくなってしまったと聞きました。

「汗と涙が染み込んだ思い出のグラウンドが、雑草が生えて荒れ果て、トラックが入ってネットが撤去されました。その光景を見ているのが、本当に辛かったです。今では跡地に分譲住宅が建ち並んでいます」

――日産野球部から他のチームに移籍した選手に対してのお気持ちは?

「休部が発表された2009年2月から、活動が終了する12月末まで、10か月で日産野球部のやってきたことをすべて伝えなくてはいけませんでした。『日産魂』は伝えたつもりでいます。日産野球部から1年でJFE東日本野球部に移籍した中野大地捕手は、今シーズンからキャプテンを任せてもらっています。本当に頑張ったと思います。チームを任せられるというのは、思いがないとできません。勝ち負けだけでなく、チームを1つにまとめる力が必要です。日産野球部での思いが、少しでも心に残ってくれていれば。と思っています」

 伊藤さんは現在、本社の「日本戦略企画本部 ビジネス&データサイエンス部」で国内営業の総務グループに所属し、さまざまなデータを販売会社に発信する業務に就いている。残念ながら、社内では野球部復活への動きはないと話す。現在は年に数回、野球教室を行い、活動を続けている。日産自動車野球部は「廃部」ではなく「休部」。名門野球部の勇姿が再び見られることを期待したい。

【了】

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki

RECOMMEND