【高校野球】チームは優勝候補へ生まれ変われる 秋の敗戦から目指した聖地
背中で引っ張った主将&エース左腕・寺島、個人よりもチーム全体の底上げに集中
履正社は、秋の大会で選抜参考の近畿大会にも出場していない。準決勝で大阪桐蔭に1-2で敗れ、3位決定戦にまわった。勝てば近畿大会、選抜出場の可能性を残していたが、阪南大高にも0-1で敗れた。夏の決勝では12得点で圧勝したチームは、この時、貧打に悩まされていた。岡田監督が「チームがまだ成熟していなかった」と話すように、劣勢になると沈滞ムードで試合が進み、はねかえす力がなかった。主将でエースでもある寺島は、チームに甘さがある、と先頭に立って変えることを決意。チーム練習では必死に声を張り上げ、個人練習では誰よりも黙々と走り込むなど、背中で牽引。寺島が登板する試合では、エースの負担を減らすために、副主将の四川が主将代理を務めるなど、個人ではなく、チーム全体の力を底上げすることを目指した。
春の大会は目の色を変えてのぞんだ。秋に負けているチームに必要なのは勝ち癖をつけることだった。春は学校によって、夏大会に向けた育成に力を注ぐことも多いが、岡田監督はこのチームに自信をつけさせるため、勝ちにこだわった。春の府大会は決勝で大阪桐蔭を破り、近畿大会も選抜王者の智弁学園を倒し、優勝。夏も力を維持しながら、挑戦者の気持ちを忘れることなく戦った。寺島、山口のW左腕、リードオフマン・福田、2年生4番・安田らも力を発揮。秋から見違えるチームに成長した。
一躍、夏の甲子園の優勝候補になった両高校だが、はじめから順当だったわけではない。秋のひとつの敗戦から、選手たちは考える力を養った。元々、個々の力は高かった。自分たちに何が必要か、自分たちは弱者だ、という考えをチームに全体に植え付けることができた指導者の力も大きい。秋の悔しさが、この夏のどこまでの爆発力、躍進につながるか注目だ。
悔しさは必ず力になる。敗者は勝者を作る。高校野球はその繰り返しなのかもしれない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count