【高校野球】ドラフト1位候補右腕 横浜・藤平尚真 相手打線が想定外だった“武器”
途中から伸びあがる力強いストレート「こんなにも当たらないか…」
5者連続三振の後、最初にボールを前に飛ばしたのは6番の千葉隆誠外野手だった。「打ったボールは外角球。真ん中からインコースのボールは速くて対応できないと思った。僕の得意なコースの外を待っていたのでバットに当たりました」。打球は遊撃手へのゴロだった。予想以上にボールは速く、内角の球は完璧にコントロールされ、手が出なかったという。
初めて外野にボールを飛ばしたのは7番の布施東壱捕手だった。「打撃マシンではあのホップする球までは再現できなかったです。全然違いました。高めも低めもコントロール良く来ました」。速い球を打ち返すことは打撃マシンの球速調整で何とかなるが、藤平のボールは手元で伸びるだけでなく、途中から伸びあがってくるような感覚に襲われるという。それだけ力のあるボールだった。
4番の植木は小中学生の時から全国大会に出場する強打者。今大会でもクリーンアップを任され、打撃に自信を持っていた。それでも最初の対戦で空振り三振をして「こんなにも当たらないか、と思いました。こういう経験は初めてでした」と力の差を感じた。2打席目も三振に倒れ、同じスイングでは歯が立たないと感じた。「3打席目からコンパクトに振ることを心掛けて、バットをいつもより指1本分、短く持ちました」と強いスイングで挑んだ。バットに当てることだけ考え、レフト前へヒットを放った。手元で伸びてくる球に苦戦し、自分がやってきた今まで通りのバッティングはできなかった。
藤平は球が速いだけではない。東北打線は、最後のひと伸びがどんな投手よりもあった、という。さらに150キロのスピードならば、なかなか対応するのは難しいだろう。機械ではどうにもならない究極の武器が藤平にはある。次戦は強豪の大阪・履正社。強力打線にホップする剛球がどこまで通用するか、注目だ。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count