悲願の25年ぶりリーグ優勝へ前進…通算201勝の黒田博樹が抱く広島への愛

日米通算200勝から4戦ぶりの勝利「広島を元気にできたならよかった」

 試合後、報道陣に囲まれた黒田は、災害についての質問に対して「頭にはあったが、マウンドに上がれば、それ以上に考えなければいけないことがたくさんある」と感傷的になることはなかった。思えば、8月6日、平和を祈念するピースナイターの試合も、先発は黒田だった。この試合では5回3失点で負け投手となり、「特別な意識はなかった。いつだろうと、マウンドに上がったら勝ちたいのは変わらない」と話したが、降板時にはベンチでグラブを叩きつけるなど、珍しく感情を露わにする場面もあった。

 今季2度目となった特別な日の登板で、チームを勝利に導いた黒田は、「結果的に勝てて、広島を元気にできたならよかった」と表情を緩めた。オリンピックイヤーの今夏、世間的には日本代表のメダルラッシュに注目が集まる中でも、広島での話題は、まずはカープだ。4年に一度の祭典よりも25年ぶりのリーグ優勝と、広島ではプロ野球が他の地域では考えられないような盛り上がりを見せている。

 70年前、原爆で何もかもがなくなってしまった街で、生き残った市民が最初に行ったのが路面電車を走らせること、そしてその次が、広島にプロ野球球団を創設することだったという話があるほど、広島でカープは特別なものだ。カープが勝てば、広島の街は盛り上がる。黒田の日米通算201勝目は、間違いなく被災者、そして広島を元気にしたはずだ。

【了】

大久保泰伸●文 text by Yasunobu Okubo

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