【高校野球】準V北海の道産子エース右腕・大西が表情を崩さなかったワケ

歴史の重みを感じながらマウンドに上がっていた大西

 その1つが注目を集めた表情だった。試合後こそ、笑顔で報道陣に対応したり、ファンへスマイルを振りまいたが、試合中は一切、表情を変えず、淡々と投げていた。大西はその理由をこう明かした。

「歴代の北海のエースでも主将でも、落ち着いた雰囲気を持っていると思うのです。それが北海に合っている」

 この1年、肩や肘の疲労や痛みから投球ができない時期もあった。腰を痛め、走り込むことすらできないことも。そんな時は「チームを客観的に見るいいきっかけになった」と練習の手を休め、冷静にチームを見る時間にあてた。この頃から、焦らずに落ち着きを持ってプレーでき始めたという。そういう姿勢が、大西を過去の先輩たちの雰囲気に次第に近づけていった。

 平川敦監督は「このチームだけでも映画が一本作れるかもしれない」と快進撃に驚きを隠せなかった。その主役は間違いなく大西。歴史を感じてしまえば、体は硬くなってしまう。いつも通りの北海野球をしようと、ナインに語りかけて戦っていた。一方で歴史の重みを感じながら、大西はマウンドに上がっていたのだ。

 惜しくも準優勝に終わったが、大西は誰よりも北海の野球部史に残る活躍を見せた。この感動的な“ドキュメンタリー”は色褪せることはない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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