チーム名変わっても歴史は消えない 伝説のサブマリンと盗塁王が明かす秘話

山田氏の一番の思い出、「涙が出た。あの時は本当にうれしかった」

 イベント当日、スタンドには阪急時代のユニフォームに身を包んだファンの姿もあった。「チームがちょっと弱いのが残念ですけどね、本当にありがとうという気持ちです。『阪急』というチームがなくなっているから、余計に嬉しい」と、福本氏は感謝の気持ちを表した。

 山田氏に1988年の引退後で一番印象に残っていることを聞いてみると、阪急ブレーブスの消滅でも、近鉄との合併でもなく、オリックス・ブルーウェーブの投手コーチを務めていた1995年、阪神淡路大震災の年のリーグ優勝だと振り返った。

「95年の優勝は強烈に記憶に残っています。ユニフォームを着て『うるっ』とくるほうではないんですが、優勝が決まったときは涙が出ました。あの時は本当にうれしかった。ユニフォームを着て、神戸にいるということが嬉しかった。阪急ブレーブスの優勝とはまた違う優勝でした」

 4日の特別始球式。マウンドには山田氏が上がり、打席には福本氏が立った。往年のサブマリン投法と“世界の福本”のスイングに、スタンドからは大きな拍手と歓声が巻き起こった。山田氏は話す。「歴史は進んでいきます。でも、昔のことが鮮明に思い出されるんです。当時を懐かしく思う人がいっぱいいる。チーム名が変わっても、歴史が消えるわけではないんです」。

 阪急ブレーブスの黄金時代、オリックス・ブルーウェーブの優勝、日本一。人々に勇気を与えたプレーの数々は、神戸、そして大阪の人々の心に、これからも生き続ける。

【了】

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki

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