黄金期を支えたOB左腕が見る広島の強さ 投手陣を楽にさせた黒田博樹の教え
頂上決戦・日本シリーズは「エネルギーを出し尽くしていい」
――今年の広島は逆転勝ちも多かったように思います。
「優勝を決めた時点で、逆転勝ちが42回あったんですよ。勝ち星(89勝)のほぼ半分。これは後に出てくるピッチャーがいいからできること。一番のウィークポイントだった中継ぎをジャクソン、ヘーゲンズというあたりで、畝コーチがちゃんと固定できたのがよかった。投手と打者の信頼関係もあったんでしょう。ピッチャーが頑張れば打者は打つ。打者が頑張ればピッチャーは抑えますから」
――25年前の1991年、川口さんは日本シリーズの第2戦、第5戦に先発で2勝し、第6戦、第7戦にリリーフ登板をなさっています。先日メジャーでも、ドジャースのカーショーが先発した2日後にメジャー初セーブを挙げましたが、なかなかできないことだと思います。
「いや、全然すごくないんですよ。稲尾(和久)さんなんて7連投くらいしてますから(笑)。ただ最終決戦ですから、エネルギーを出し尽くしていい。僕の場合、91年のシーズンは非常に充実していたし、『オレに任せておけよ』っていうのがあった。あの年は佐々岡(真司)が最多勝(17勝)で沢村賞も取る活躍で、日本シリーズの頃には、ちょっと疲れていたかなって。当時対戦したのは、黄金期だった西武。秋山(幸二)、デストラーデっていうすごいバッターと戦えるのは大変光栄なことだった。だから、あのパ・リーグを制した青い軍団で胸を借りて投げ込んでいただけです」
――日本シリーズは、普段はできない“もう一踏ん張り”ができる舞台なのかもしれません。
「やっぱり日本一っていうのは1球団しかない。そこに向かって邁進する中で、残っているエネルギーを全部ぶつけて、それで優勝できればいいし、ダメだったら残念だったという潔さ、僕はそれが必要だと思いますね。日本シリーズは楽しんで野球をやってもいいと思うんですよ。リーグ優勝を果たして、セ・パのトップを決める決戦ですから。野球人たるもの、日本のトップに立ちたいと思います。でも、負けようと思って負けているわけじゃない。勝とうと思って戦った結果ですから。そこを恐れずに、広島の選手には日本シリーズを楽しんで戦ってほしいですね」
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count