世界に広がる日本人指導者の輪…オーストリア代表を率いる監督の夢

斎藤監督もエール、母国・日本に完敗も「選手たちが何かを感じ取ってくれたら」

 現在、オーストリアはヨーロッパ内でも決して強い方ではないという。実際、今大会に出場したもう1つのヨーロッパチーム、チェコは世界ランク14位。その他、オランダ、イタリア、ドイツといったチームが強豪として考えられている。縁あって出場のチャンスを得た今大会で、坂梨監督は「選手が何かを感じ取ってくれれば」と話す。

「1つでも勝てれば儲けもの。でも、オーストリアの国内リーグでは、5連戦だったり、9日間に8試合をしたり、という経験すらもできない。こういった新しい体験を通じて、そして強豪国と対戦する経験を通じて、選手たちが次につながる何かを感じ取ってくれたらいいと思います」

「胸を借りるつもりでぶつかりたい」と話していた母国・日本戦では完膚なきまでに叩きのめされた。だが、この敗戦が次につながれば、決して無駄な負けにはならない。

 2020年には東京オリンピックで野球が正式種目になった。「オーストリア代表を連れて東京オリンピックに出るなんて、夢のまた夢」と笑うが、参加を目指して戦う欧州選手権にはU-23のメンバーも多数参戦。メキシコで世界と戦い、肌で感じた“差”をどうやって埋めたらいいのか、選手1人1人が高い意識を持って練習に臨めたら、そこに道は開けるかもしれない。

 侍ジャパンU-23代表を率いる斎藤雅樹監督は「監督会議の時にちょっとお会いしたんですけど、ビックリしました。野球が普及していないところにおられるんで大変だと思いますけど、これからどんどん強くなっていってもらえたらいいと思います」とエールを送った。

 前例がない場所で道を切り拓いていくことは大きな苦労を伴うが、それと同時に充実感にもあふれる。いつか再び日本代表と戦う日が来たら、少しでも爪痕を残せるような戦いができるようにチームを成長させていきたい。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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