サブローが描き出した野球人生 グラウンド内外で見せたいくつもの“顔”
ラストゲームでスタンドが熱気に包まれた場面
一時期、スイッチヒッターに挑戦した。持ち前の俊足もあるから、それを活かさない手はない。だが、それはうまくいかず、現在のように右打ち一本でプロ生活を全うした。
状況をしっかり見極めた打撃はチームに勝利をもたらしてきた。北京五輪出場をかけた予選、サブローはチャイニーズ・タイペイ戦で1点を追う7回無死満塁でセーフティスクイズを敢行。これが成功して同点となったのちに、日本代表は打線が爆発。一挙6点を奪い、試合も10-2で快勝して北京五輪出場を決めた。
常にフィールド上では、冷静にプレーしてきたサブロー。チームの勝利のため黙々と全力を注ぎ込んで来た印象がある。しかし別の顔を見せることもあった。
05年日本一になった際、当時、ロッテのイメージキャラクターだった女優の上戸彩さんがファン感謝デーに来場した。「可愛いっすよね。でも、まだ若いっすもん(笑)」。とてもくだけた話をしていたのを覚えている。別人のサブローがいた気がした。
そして、ついにこの日が来た。引退試合。サブローは全打席、バットを思い切り振る。3打席三振。9回にはDHから守備に着いた。その前に、ウォーミングアップでキャッチボールをしたのは福浦和也。ずっと一緒にプレーしてきた戦友。マリーンズ一筋、地元・習志野高卒、23年目のフランチャイズプレーヤー。その瞬間だけでも、スタンド中が熱気につつまれた。