世界一カブス・マドン監督は何がスゴイ? 直弟子・岩村明憲が語る名将秘話

勝っても「監督の手柄ではない」―

――海外で新チームに入るのは、ただでさえ緊張する中、事前に監督とじっくり話ができたことは大きいですね。

「チームに入りやすかったね。しかも、オープン戦でまったく打てなかった(打率.220、0本塁打)。あの時も、ジョーに呼ばれて『日本でもオープン戦はあるだろ。アキはいつもどんな練習をしているんだ? お前の練習にとことん付き合うから、やりたい練習を言ってくれ』って声を掛けてくれた。そこまで考えさせて本当に申し訳ないと思ったね。だけど、もう少し環境に慣れればなんとかなるっていうのはあったから、『俺はとにかく一心不乱にバットを振ることが大事だから。今まで通りやらせてくれれば大丈夫』っていう話をして。結果、脇腹を痛めるまで4月は好調だった(打率.339)。ここでも信頼してもらえたよね」

――監督からの信頼を感じると、選手のモチベーションが高まりますね。

「監督が守ってくれるからって、選手が調子に乗りすぎてもダメだけどね(笑)。任侠映画を見た後で、気分が大きくなって映画館から出てくる人みたいに、ちょっと勘違いする奴もいるから。それは気を付けた方がいい。やり過ぎはどつかれる(笑)。

 ジョーから学んだことと言えば、俺は福島の選手に対して『勝っても俺の手柄でもなんでもないよ』って、わざと最初から言ってある。一昔前だと、ボスのために野球をしているんだから、勝ったら監督の手柄。俺もそう思ってたから、ジョーにも言ったんだよね。『ジョーのしたい野球を教えてくれ。俺はそれを表現するから』って。でも『私のために野球はしなくていい。そんなに自分を犠牲にすることはない』って言われた。

 それでも『俺はそういう文化で育っているから、言ってくれた方が働きがいがある。このチームに必要とされてきたんだから、チームのためにやるよ』って伝えたら、互いの意見をすり寄せる形にもっていってくれた。それがあったから、2008年に三塁から二塁へのコンバートも受け入れられたし」

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