“予測できる割合”が格段に増加―DeNA筒香嘉智、知られざる進化の裏側・後編
今を見て先を予測、「日常の過ごし方がトレーニング」に
これまで田村氏は1000人以上のスポーツ選手と接してきたが、野球選手にアンケートをとると、ある傾向が見られるという。
「7割くらいの打者は、好調な時にボールがゆっくり見える、と答えています。ピッチャーはキャッチャーが近くに見えるって言うんですね。そうに感じて見ているのは『目』そのもの。だったら、目がそういう見方になるスイッチを持っていればいいんです。これは視力や動体視力計を見る能力では左右されない見え方。何がスイッチになるかというと、意識とか精神とか内面が非常に関わってくるわけです」
よく野球では「ボールを目で追う」という表現を使うが、実際に時速150キロの速さで動くボールを目で追うことは難しい。「ボールを点として目で追いかけて『今だ!』と思って動いても遅い。外の目が網膜に今を映し出したとしても、内の目はその先を予測しなければならない。今を見て、未来を見るということ。つまり、外の目と内の目の連動が非常に大きな役割を果たすわけです」と、田村氏は話す。
「例えば、ボールペンを真横から見た時、外の目は真横から見た映像を網膜に映す。でも、内の目=心の目を使えば、横からの映像だけではなく、上からの映像、反対側からの映像を予測して見ることができる。さらに広げれば『あの店で買ったな』とか『誰が使っていたな』ということまで見えてくるわけです。だから、内の目を自由に広げられれば、今を見て、先を見る・予測することもできるんですね」
武術で言う「心眼」が、これに近い感覚だろう。野球に置き換えれば、今を見て、先が予測できた時に、打者はボールがゆっくり見え、投手は捕手が近く見える、というわけだ。日常生活でも、今を見て、先を予測して行動できる人がいる。「気が付く」人、「気を配る」ことができる人、だ。
「野球をやってボールの未来を見ようとするだけでは、内の目は自由にはなりません。日常生活の中で、今のやりとりをしながら未来を見る心掛けをする。日常の過ごし方がトレーニングなんですよ」