“予測できる割合”が格段に増加―DeNA筒香嘉智、知られざる進化の裏側・後編
予測できる割合は着実に増加、「3年前に比べたら圧倒的に増えてきました」
2015年から主将に任命された筒香は、チームが連敗した時に選手間のミーティングを開いたり、スランプに落ち込む後輩に声を掛けたり、気配りのできる人物として信頼が厚い。「ラミレス監督になって、キャプテンとして求められる役割が明確だったのでやりやすかったです」と話すが、主将としてチームをまとめる経験が、自身の「内の目」を養うトレーニングにも一役買ったようだ。実際、2016年シーズン、筒香は打席の中で、今を見て先を予測できる割合が増えてきた。
「2015年はピッチャーが球を投げた瞬間に『これはホームランだ』って思えたのは5打席くらいだったんですけど、2016年にはちょっと増えた。それ以上に『これはボールや』って思う回数は、3年前に比べたら圧倒的に増えてきましたね。ボール球に手を出さなくなったというか、最初から振る気が起きない感じです」
物の見方・見え方という点でも、筒香は「内と外の統合」が進みつつある。
筒香を支える2人の“先生”、矢田氏と田村氏の教えは、それぞれ「身体」と「目」と入り口は違うものの、「内と外の統合」という根本は一致している。身体能力や運動能力、打撃技術という外面だけではなく、意識や心、考え方も含めた内面にも目を向けることで、野球選手としてのパフォーマンスが向上し、人間としての幅と深みが増す。
2冠王で終えた2016年。大きな目標を達成したかのように周囲は称賛の声で溢れかえるが、「内と外の統合」をようやく感じ始めた筒香にとっては、まだまだ序章。パフォーマンスを最大限に発揮するためのスタートラインに立ったに過ぎない。
自分に対する限界を作らないためにも目標設定はしない。常に高みを目指しながら、少しずつ階段を上り続けるだけだ。少し先にはどんな世界が見えるのか。その風景を楽しみにしながら、今日も地道にトレーニングを続ける。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count